千葉・茨城に雹が降る


5月24日昼過ぎにおきたひょうをともなう突風は千葉県のほか茨城県南部にかけても吹き荒れた。この影響で、学校の窓ガラスが割れるなどして児童ら100人以上が負傷したほか、鉄道などにも乱れがでた。

ひょうと突風 100人以上がけが

 千葉県では、我孫子、佐倉市のほか白井町など24市町村で、ミカン大からピンポン玉大のひょうが激しく降った。直撃を受けたり、突風にあおられたテントに当たったりして少なくとも76人がけがをしたほか、学校などの窓ガラスも割れた。
 柏市では、土南部小3年の児童119人が市内の公園で校外学習をしていた際、ひょうに当たり、60人が軽いけがを負った。
 佐倉市では内郷小学校でガラス142枚が割れた。本埜村役場によると、村内では稲が水面になぎ倒されたり、タバコやナス、ソラマメなどの葉がほとんど落ちたりしたという。
 茨城県内でも、取手市内の小・中学校、高校の21校で窓ガラスが707枚割れたほか、近隣市町村でも学校の窓ガラスが割れたり、風に飛ばされたトタン屋根が電線を切断したりする被害が出た。
 また、利根川にかかる国道6号の大利根橋を走行中の2トントラック2台が横転した。JR常磐線も架線に金属板がからまって上野―土浦間が一時不通になった。

被害拡大する千葉県

 千葉県内を襲ったひょうは、通行人の頭を直撃し、学校や家々の窓ガラスを割り、商店街の店頭商品や、畑の農作物を台無しにした。

ミカン大

 銚子地方気象台によると、県内は24日、朝から晴れて気温が上がる一方、昼ごろ、上空約5500m付近に大陸からマイナス17度の寒気が入った。地表の熱で空気の塊が上昇、上空で冷やされて雷雲にまで発達すると、ひょうが降る。地表に熱がこもる一方、上空に寒気もまだ入る5月ごろに起きる現象だ。
 県消防地震防災課によると、ひょうの塊は、佐倉市でミカン大、我孫子市でもピンポン玉大だった。印西市で28歳の女性の両足に当たり打撲を負ったほか、お年寄り5人が突風で舞ったテントが頭に当たるなどで、同市、我孫子市、沼南町などで少なくとも76人が軽いけがをした。
   豪雨も各地であり、床上浸水が成田市や富里町で三棟、床下浸水も横芝町や松尾町などで18棟あった。
 雨雲は南東へ進み、午後2時前に太平洋へ抜けた。

17校でガラス割れる

 学校での被害も相次いだ。県教育委員会などによると、少なくとも17の高校や養護学校のほか、小中学校などでも体育館や教室の窓ガラスが割れたという。
 柏市新逆井1丁目の柏市立土南部小学校(野口和子校長、児童数712人)。校外学習で同市布施のあけぼの山公園にいた3年生の児童119人のうち、60人がひょうに当たり、頭にこぶができるなどした。
 同校の飯塚三男教頭によると、午後0時10分ごろから急に暗くなり、雷が鳴り始めたという。同教頭は「病院に行った児童はいなかったが、ショックを受けている児童は多かったようだ」と話している。
 佐倉市鍋山町の佐倉高校(山田大三校長、1218人)では、校舎の窓ガラス計126枚が割れたりひびが入ったりした。中間試験終了後で、校内には自習中の生徒ら約300人がいたがけが人はなかった。  同校によると、割れたのは、管理棟の記念館の百八枚など。教室で自習をしていた2年生の萩谷眞幸君=16歳=は、「直径3センチ以上のひょうが、『バシャッ、バシャッ』と地面に落ちていた。驚いて窓から離れた」と話していた。

天井破れる

 街では、商売にも影響が出た。八街市文違のジャスコ八街店では、東口の天井に雨水がたまり、高さ約3mの天井が抜け落ちた。けが人はなかった。同店の店員らによると、屋根裏の配水管から漏れた雨水が天井裏にたまり、重さで天井が破れたのでは、という。
 店は鉄骨平屋建てで、一昨年11月に開店。雨水は床面積の約3分の1にあたる約1800平方mにまで広がり、浸水した場所は営業を中断。従業員らが必死に水かきをした。
 ミスタードーナツ八街ジャスコショップでは、天井からの雨漏りで商品棚のドーナツに降り注ぎ、約1000個が台無しになった。なべの油に雨水が混じって営業は停止。男性店員=22歳=は「ふやけてみんな駄目になった」と顔をしかめた。
   新興住宅地の印西市小林浅間では、家の窓ガラスやプラスチック製の車庫の屋根に穴があいた。同所の会社員吉原久雄さん=56歳=は「雨どいや車庫の屋根に穴があいた。こんなことは初めてだ」。隣家の女性は、印旛村で乗用車を運転中、ひょうに遭遇。「車を路肩に止めて降りやむのを待っていたが、車のリアガラスが粉々に割れた」と、興奮して話した。

ハウス全壊

 農作物の茎が折れるなど、農家への被害も深刻だ。
   我孫子市高野山新田の農業岡田満雅さん=43歳=は、約990平方mのハウスが全壊する被害を受けた。「午前中の収穫を終えた直後だった。トマトの損害だけで約300万円、ハウスの修理には何百万円もかかる」とため息をつく。
   印旛村吉高の農業綿貫良雄さん=53歳=の約3000平方mの畑は、約半分の面積でトマトやズッキーニなどの茎が折れたり、ハウスのビニールが破れたりした。
 綿貫さんは「トマトは8月に収穫予定だった。これから丹念に手入れをしても、回復は無理だろう。ハウスのビニールも昨夏に100万円かけて張り直したばかりなのに……」と漏らした。隣の本埜村でも、稲が水面になぎ倒されたり、タバコやナス、ソラマメなどの葉がほとんど落ちる被害が出た。村役場によると、「村内ほとんどの作物が全滅に近い」という。

成田線遅れ

 鉄道各線や成田空港でも影響が出た。
   JR成田線は我孫子市の湖北駅で午後0時半ごろ、ひょうで前方の見通しが悪くなり、成田発我孫子行き上り普通列車が一時運転を見合わせた。同列車の窓ガラス一枚が割れたが、けが人はなかった。同線は上下計5本が運休、8本が最大23分遅れた。外房、総武各線も遅れや運休が生じ3500人に影響した。
   成田空港は、雷と激しい雨で午後零時半から約40分間、出発3機が離陸を見合わせ、到着6機が上空で待機。到着機のうち2機が羽田空港へ行き先を変えた。

茨城県内でも窓ガラス被害多発

 茨城県内でも雹が降った。取手市では最大瞬間風速31.2メートルを記録(市消防本部調べ)。割れた窓ガラスで児童や生徒が手や足を切るなど、取手署の調べで31人が軽いけがをした。ゴルフ練習場の高さ約40メートルの鉄柱が折れ曲がったり、電線が切れて停電したりするなど、千葉県境を中心に被害が広がった。

 取手市では、同日昼前ごろから急に暗くなり、雨に交じって2、3センチ大のひょうが降り出し、みるみる積もった。
 取手署によると、市内の小中、高校の計21校で、約770枚の窓ガラスが割れた。この約半分が市立永山小学校の被害で、同校児童の19人をはじめ、けが人は一般家庭などを含めて31人にのぼった。
 千葉県境の利根川にかかる国道6号の大利根橋では午後0時半ごろ、上下車線を走行中の2トントラック2台が、ほぼ同時に突風を受けて横転。ともに運転者にけがはなかった。
 県警や県消防防災課のまとめでは、取手市のほか、岩井市辺田でパチンコ店の屋上事務所のトタン屋根が吹き飛ばされて近くの電線を切断し、周辺の約百世帯が1時間にわたって停電。つくば市でも落雷で約60世帯が一時停電した。伊奈、守谷、利根町でも保育所や学校のガラスが割れた。
 JR常磐線は取手駅付近の架線に風で飛ばされた金属製の細長い板3枚が引っかかり、上野―土浦間が上下線とも一時不通に。約3万人の足が乱れた。
 一方、ネギやキャベツなどもひょうの直撃を受けた。被害が集中した取手市では、木々の若葉が吹き飛び、街路はひょうと若葉で埋まった。市民は「こんなのは初めて」と、音を立てて落ちるピンポン玉大のひょうに驚いた。市立永山中学校では、体育館西側の窓ガラスがほとんど割れて落下したが、授業をしていた約30人は片隅に避難して無事だった。昼食後に生徒は下校し、教職員がガラス破片の後かたづけに追われた。校庭の木の下には、死んだムクドリが10羽近く落ちていた。

農作物被害、千葉・茨城で計60億円超える


最盛期を迎えていたハウストマトも全滅24日午後1時10分、千葉県我孫子市で
 千葉県北西部から中部にかけて24日午後に降ったひょう害について、同県は25日、農作物の被害額(午前9時現在)が、少なくとも約51億3586万円にのぼったと発表した。
 県農林水産部によると、ひょうは柏、我孫子、佐倉市など24市町村で降った。主な被害品目と面積は、スイカ561ヘクタール、ジャガイモ130ヘクタール、ネギ120ヘクタール、などとなっている。
 また茨城県内の農作物被害は約9億1000万円だった。


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