京都から鈍行に乗り込んで、はて、どれくらいたっただろう…。やってきた温泉都市・城崎は小説「城崎にて」(誰が書いたんだっけなあ)の舞台としても知られている。日本海の海の幸が豊富に入り込んで来て、温泉で美味いカニでも…という淡い期待を抱いて、都会の雑踏に身をもまれた現代人が安らぎを求めやってくる。
この城崎温泉へ、東京から青春18きっぷとお友達になって、大垣夜行と山陰本線を乗り継いでやってきた。1万6000円もする、後にも先にもないであろう宿に泊まり、贅沢な一夜を過ごした。ここにやってくるだけで疲れてしまい、城崎名物の湯めぐりもロクにできなかった。翌日も18きっぷで帰京…「おまえは何しにいったんだ」というバカ旅である。まったくそのとおり。
そんな旅で唯一した途中下車は、この「玄武洞駅」であった。名前を見れば一目瞭然、玄武洞があるのである。玄武洞というのは玄武岩でできた洞窟(といっても、鍾乳洞と違って中は入れない)である。京大のえらい先生がここを調査し、玄武岩による地磁気異常についての研究を行ったとして、地学の世界ではそれなりに知られているが、理科の世界と程遠い生活をしている私にとって、そのような事実を知る由もなかった。
玄武洞という駅は、まったくのオンボロ…というより、ありふれたローカル線無人駅である。観光客は、駅から数分歩いたところから川の渡り舟に乗って、この玄武洞へ行く。観光地といったって、前述のように、興味がなけりゃ、なんでもない。しかし、ここはローカル線の無人駅、一度降りたらそれなりの覚悟がいる(=列車が来ない)。
この旅は、いまだに何しに行ったのか、どうして玄武洞しか見なかったのか、疑問が多い。
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