伊勢市駅に着いた。
この駅はJRと近鉄の駅が合体しているのだが、残念ながらどちらが管理しているのか僕は知らない。でも、どちらかというと近鉄には宇治山田駅があるせいかここではJRが幅を利かしているように思える。
改札口をでて、辺りを見回してみた。右側にはなにやらデパートがある。前方には伊勢神宮があるらしい。左側にはこれといって目立つものはない。小考の末、まずは伊勢神宮にお参りをしに行くことにした。
伊勢神宮(外宮)は師走も終わりだというのにかなりの人がいた。主にお年寄りの参拝客が中心だが、家族連れもたまに見られた。なぜお正月ではなくて今の時期にきているのだろう、と不思議に思ったが、人のことであるし、なによりも僕自身も今の時期に来ているのだし、ということでこの疑問を頭の中から追い出した。
伊勢神宮の中の参道はくねくねしていて、正直言って方向感覚が麻痺してしまった。はじめのうちは、こっちが北とか、あっちが南とか、考えていたのだけど。
どうやら終点に着いたらしい。僕も周りの人に習ってお参りした。警備の人(警察の人?)がいるのがさすがは伊勢神宮だなあ、と思った。
帰りにお守りでも買おうかな、と考えた。お守りがないと心配そうな人もいるし。だが、ここで重大なことに気がついた。
「今は12月の終わりだ。今お守りを買っても効力はあと1週間足らずしかないのではないか」
これはお札を売っているお姉さんにきいてみるしかあるまい。
伊勢市駅前に戻ってきた。この旅行は無計画をモットーとしていたので次の目的地はまだ明確には決まっていなかった。ただ、漠然と奈良・大阪方面に抜けようかな、とは思っていた。どこにどのように行くか、ここは考えどころだった。
考えても良いアイデアが浮かばなかったのでデパートに入ってみることにした。デパートの名前は「三交デパート」。おそらく三重交通に関係があるのではないかと考えられる。中は当然ながら暖房が効いていて暖かかった。僕は男であるし、年齢も未だ若いと自負しているので普段デパートには行かない(お金がなくて手が出ないというのもあるが)。だから「未知」の「デパート」に入るのはかなり勇気(普段の253倍程度)が必要である。
ここで購入したのは、
カロリーメイト | ×1 |
お菓子 | ×1 |
なっちゃん みかん 500ml | ×1 |
である。これで全部だが、これはそのまま僕の昼食のすべてでもある。これを見ると僕の旅行哲学がわかるのではないかと思う。
僕はレジでお金を払うと、デパートを出て駅に向かった。
伊勢市駅のベンチに座りながらどうしたものかと考えた。とりあえず、目的地は奈良にすることにした。もしJRを利用するならば伊勢市から亀山に出てそこから関西本線、ということになるだろう。近鉄を使うなら伊勢市から大和八木まで行って、そこから北上するというルートになる。あるいは折衷案として、津まで近鉄、そこからJRという方法もある。第一のJR案は青春18きっぷを使うことによってお金を節約できるのが長所だが、なにせこの辺のJRは本数が少ない。奈良に着くのは夜になると覚悟しなければならないだろう。第二の近鉄案は、それなりに電車の本数がある反面、別に運賃がかかってしまう。運賃表によるとその額約1500円。折衷案はとりあえず津まで行き改めてまた考えてみることができるのが強みだが、やはりJRがネックとなろう。
いい匂いが漂ってきた。後ろを向くと饅頭屋さんがあった。けれどもそれどころではない。早くどうするか決めなくてはならない。時刻は約2時半。
上を向くと、近鉄の時刻表がかかっていたので次の大阪方面行きは何時か見てみることにした。
急行 上本町 14:35
神様はこれに乗れと言っているように思えた。僕は奈良までの切符を買い、急いでホームに向かった。
ホーム。上り近鉄特急がホームを通過していった。急行列車はまだのようだった。ホームをうろうろしていると、アナウンスが流れてきた。「急行 上本町行きがまいります」云々。
ウエホンマチ、ね。恥ずかしながら僕はそのときまでこの駅名が読めなかった。やはり、実際旅行してみると、いろいろなことがわかるものだ。
赤を基調とした近鉄電車がホームに滑り込んできた。4両編成。伊勢市を出ると、次の停車駅は松阪である。
(2002年6月追記)
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