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西日本旅客鉄道(JR西日本) 紀勢本線
串   本 くしもと

開 駅
OPEN
昭和11(1936)年12月11日
所在地
ADDRESS
和歌山県西牟婁郡串本町串本小森生
接 続
CHANGE
なし
 本州最南端の駅 (2000年6月 #10)
 和歌山県串本町は、本州最南端・潮岬のある町としてしられている。「最…端」という言葉に弱い私は、紀伊半島の旅行で、迷わずコースに組み込んだ。

 これで台風が接近していた…という話だったら面白い(?)のだが、残念ながら台風と縁のない2月のはなしである。

午後3時、本州最南端・潮岬へゆく

 その日は、熊野三山のひとつ、熊野那智大社や那智滝などを廻ってきたため、串本の到着は午後3時ごろになっていた。予定では1時間ほど早く着くはずだったのだが、前の紀伊勝浦駅で入った食堂でなかなか出てこなかったこと、それから私がバス車内にカメラを置き忘れてしまって、営業所まで取りに行ったため、予定の列車(特急「オーシャンアロー」)に乗り遅れてしまったのが原因である。

 何せ、紀伊半島の先端あたりまで来ると、列車の本数が激減する。「周遊きっぷ」で回っていたので特急でも構わなかったが、これが「18きっぷ」だったらエライことになってただろう――などと心配しながら、次の列車まで30分ほどあり、紀伊勝浦駅周辺をうろうろしてから、「スーパーくろしお」に乗ってやってきたのだ。

 午後3時から観光地へ赴くのは度胸がいる。実は、その日の宿は紀伊田辺駅近くにある。串本から特急でも約1時間かかる。

「まあ、予約してあるし、夜ご飯は外で食べなきゃいけないんだから、大丈夫でしょ。」

と、勝手に゛門限8時"と決め、それまでに着けばいいや…という軽〜い気持ちでいた。

 特急で串本駅に着くと、特急に接続する潮岬行きのバスがいて、それに飛び乗った。20分ぐらい乗って、白い灯台のそびえたつ潮岬に着いた。

 大きな公園になっていて、もっと時間が早ければ芝生にねっころがっていたかもしれない。雨まで降ってきたのは、歓迎せざることである。三重・二見浦にある水族館の売店で買った、1本400円の傘(ヤクルト傘)を挿しながら、「本州最南端の地」と書かれた記念碑をバッグに記念撮影をした。また、海の方を眺めて「あの岩が最南端だ」などと議論しながら、瞬く間に時間は過ぎていった。

 夕方4時になり、そろそろ駅に戻ることにした。串本発午後4時41分の普通列車で紀伊田辺に行けば7時。ご飯食べて、ちょうどいいや、と思った。

 だったら、バスに乗り込み駅へ向かう――と思ったら大間違い。なんと、駅に向かって歩き出したのだ!

 これには訳がある。行きのバスの車内で、郵便局を発見したのだ。私は切手コレクターである。ほら、本州最南端の郵便局だったら、何かありそうじゃないか? そこに行くために、歩いていくことにした。(私はいわゆる「旅行貯金」なるものをやっていない。もっぱら使うのみである)。

 準備がいいのか、国土地理院2万5000分の1地形図「串本」を手に、歩き出したのである。

 途中、道に迷ったかと思ったが、駅行きの路線バスが走っていたので何とか道を見つけ、郵便局にたどり着いた。「潮岬郵便局」という何かありそうな局であるが、残念ながらここだけの切手! みたいなものはなく、せっかくなので風景印(絵の入った消印)を葉書きに押してもらった。葉書代50円で、いい記念である。

 繰り返すが、私は旅行貯金なるものはやっていない。もっぱら使うのみである。このときだって、財布はかなーり、やばーい状態であった…。

゛a-coop"(エーコープ)の悲劇

 郵便局を出たころには雨は上がり、いよいよテンションは高まった。バスも行ってしまい、こうなったら駅まで歩こうということになった。約5km、時間は何とか間に合いそうだ。地図もあるので、何とかなる。もし、途中で疲れたら、バスに乗ればいいんだ。非常に楽観的であった。

 台風でおなじみ、潮岬測候所などがあって、結構楽しい。道をぐんぐん進んでいく。途中でまた雨がぱらぱら降ってきたが関係はない。すべては予定どおり、進んでいた。

 串本電話局の前に着いた。a-coopがあった。バス停もあった。バス停があるということは、間違っていないということだ。バスはあと10分すると来るようだ。駅まで約1.5km、もしかしたら私の方が早く着けるかもしれない。へっへっへー。

 地図を見て、信号を右に折れた。a-coopを左に、とことこ歩いていった。小学校があって、児童がランドセルをばしばし叩きながら歩いていた。小学校の前は、左に急カーブになっていて、その先には橋が見えた。とことこ歩いていった。歩いた。歩いた!!

「そろそろ、バスが追い越して来てもいいのだが…」

 時間的には、さっきの停留所を出たバスが、この道を走って行くはずだ。しかし、来ない。

「まあ、バスは遅れるのが仕事だからな!」

 そう納得したのだが、20分過ぎても来ないと、さすがに不安になる。

 さっきまで細かい間隔にあったバス停も、てんで姿を見せていない。ところで、私はいま、この地図のどこにいるのだろうか?

 道の先に橋があって海があって、倉庫が…。地形図がその情報を反映しない。道路地図と違い、目標物が、あまり書いていない。郵便局や学校はマークがあるが、倉庫なんかみんな黒い粒である。

 ――道に、迷った。

 列車の発車時刻まで、あと30分となかった。この道が間違っていたとしたら、時間までに駅にたどり着くのは不可能に等しかった。

 すでに気付いていると思うが、この旅行は、私の他に友人1人とで行ったものである。地図を見てナビゲートしていたのは私で、友人に聞いても知ってるはずがない。

 相談した結果、正しいことが確実なa-coopまで戻ることにした。迷子の鉄則、勇気を出して元に戻る、というわけだ。

 間違って歩いた道を元に戻るのは、これほど哀しい、惨めなことはない。行きはとことこ、わいわいと歩いていたのに対し、戻り道は「ああ、どこで間違えたのかなあ」「列車、間に合わないね」「メシ、ど〜しよ」などと、暗い話になる。

 a-coopの近くまで来た。ここまでは正しい。では、どう行くべきか? こうなったら「困ったときのコンニチハ」作戦に出ることにした。道に詳しい地元人を捕まえレクチャーしてもらうのだ。a-coopの暇そうな青果部長にでも尋ねようとしたが、どうもa-coopが気に食わないので(これが迷子の元凶と決めていた)、a-coopの前にあるクロネコヤマトの宅急便の営業所に行ってみた。

「すいませ〜ん」

 プレハブ事務所の係員に声をかける。

「はい、何でしょう?」

 大きなザックを背負った姿に、やや驚いた顔をした係員。

「あの〜、ここは、どこでしょう?」

 記憶喪失した人のココハドコを実践。テーブルに頼り綱・国土地理院2万5000分の1地形図「串本」を出す。「どこですか?」

「ええ? ええとねえ、…どこだ?」

 およそ宅配のプロらしからぬ頼りない第一声で、地形図での場所探し。そりゃ、そうでしょ。いきなり地形図出されて「ここはどこ」といわれても、ランドマークの少ない地形図だとスグには分かるまい。

 ほどなくして、「ここですね」と教えてくれた。係員の顔は笑っていた。「地形図で迷子になった旅人」を笑っている顔である。決して微笑ましいものではない。ますますa-coopが気に入らなくなった。(とばっちり、a-coop!)

 ――というのも、さっき、a-coopの道を右折したのが間違いで、そこは直進するんだったのだ。なぜ勘違いしたかというと、要は地図の見ているところが違ったのである。言われてみると、地形図のNTT電話局のところに、電電公社のころの電話局のマークはないけど、電波棟のマークがあった! 見落としてました。それよりも、a-coopに惹かれて右折したのが失敗だった…。

 時間はとっくに5時41分を過ぎていた。次の列車は、6時48分発「特急オーシャンアロー32号」である。1時間も電車が来ないのだ。まあ、いいか。紀伊勝浦から串本に来るときに「オーシャンアロー」に乗る予定だったのが、遅れて「スーパーくろしお」になってしまい、「オーシャンアロー」に乗りそこなったのだから…。

夜食「新兵器」との出会い

 串本駅に帰ってきた。6時すぎ。

 特急で紀伊田辺に着くのが7時46分、そこからバスだから8時すぎである。ということは、いまのうちにご飯を食べないといけない。

 しかし、串本駅周辺、なにもない。駅は普通の駅で、都会の駅と違って駅ビルがあるわけではない。キヨスクは開いていたが、新聞を食べるわけにはいかない。新聞は買ったが。

「ちょっと、外を偵察してくる」

 友人は待合室で、今日1日の出来事を詳細に日記に付けていた。書き甲斐があるだろうな。私はというと、そのすきに外に何か食うものはないかを探しに行った。

 こうなったら、コンビ二でもいいんだが…。

 まず、駅舎の隣にある、バスの待合室のような建物に入った。寝袋があれば、ここで一晩過ごせそうである。自販機がたくさんあって、ジュース、ハーゲンダッツ、グリコ、そして…ん??

 あわてて、友人のところに戻った。

「いいもん見つけちゃったよ、ちょっと来て!」

 無理やり待合室の自販機コーナーに連れて行った。「これ!今夜の晩飯にしよう!」

 それは、ニチレイの冷凍食品をチンして出してくれる画期的な自販機「24h HOT」である。東京駅9、10番ホームや高速道サービスエリアにある、アレである。しかし、売っているものが違う。タコヤキとか焼きおにぎりではなくって、何とラーメン、天ぷらうどん…である! カップヌードルの自販機だと、発砲カップが出てきて自分でお湯を入れ3分まっていただきます、だが、これは、解凍(冷凍なので)、お湯入れまで自動でこなし、約4分であったかソバができあがり、なのだ。味もカップめんとは一段も二段も違うだろう。

 その日の昼は寿司なんか食べて、結構出費した。食費調整のため、これをメシに!!

「え〜、ちゃんとしたの食べようよ。1人で食べて」

 ――友人は、ノリ気ではなかった。しかし、興奮した私はニチレイの営業マンになったように、この素晴らしいシステムとメリットを説明、とうとう折れた友人もノッてくれた。

 こういうのをゴリオシという…らしい。ともかく、私はチャーシューメン、友人は天ぷらそばを食べた。ともに400円代で、味はなかなか。ちなみに、串本駅には立ち食いソバ屋は、ない。

 ラーメンを夜食にしたのは何度もあるが、これほど訳のわからない状況の下での夜食は、最初で最後である…と信じたい。

オーシャンアロー 特急「オーシャンアロー」の283系特急電車。カッコいいでしょー=1999年2月/ETN
 串本発午後6時48分の「特急オーシャンアロー32号」に乗った。「オーシャンアロー」に使われる283系特急電車、洗練されたフォルムは、JR西日本随一の車両だろう。曲線美がなんとも言えないセンスの良さを感じる。対極にあるのがスーパーあずさ(E351系)である。

 自由席に座ろうとしたが、喫煙可能の車両だったので気分が悪く、ラウンジカーに腰を据えた。大きな窓で、多少うるさいが、なかなか居心地はよい。

 あまり遅くなると心配をかけるので、ホテルに電話を入れる。車内の公衆電話からかけようとしたが、トンネルが多いせいか、つながりにくく、駅に着いてからかけることにした(意味ないじゃん)。

 58分ほどで紀伊田辺に着いた。電話をかけ、行き方を聞く。バスに乗って、暗闇の中を走って行く。

 ホテルに着き、ようやく落ち着いた。さっそく大浴場へ行った。露天風呂まであって、よかった。今日の汗と垢を洗い流した。

 風呂から出て、部屋に戻ろうとエレベーターホールで待っていたら、自販機コーナーがあったので、風呂上りの1杯を買いに行ったら…。そこに「24h HOT」があった。今度のはタコヤキ、焼きおにぎりが売ってるやつである。どうも、これには縁があるようですなあ。

 フライドポテト、タコヤキ…ごっそり買い込んで、部屋へ戻った。ラーメンだけではおなかがすきますからなあ。テレビをかけたら、よみうりテレビで「カリオストロの城」がやっていた。ポテトを夜食がわりに、映画を楽しんだ…。

 串本駅――こんなことがある(かもしれない)、不思議ゾーンです。…かな。


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