かなり複雑な理由があって、私たちは八高線・毛呂駅にいました。時間は18時過ぎだったのではないかと思います。外はすでに暗く、見えるのは街の明かりだけでした。
私たちは駅前にある「ヤマザキ」に入り、食べ物と飲み物を買いました。私が買ったのはよくあるコンビニ弁当と「キリン一番絞り」缶ビール。もう一人の同行者は…何だったでしょうか、やはりコンビニ弁当のたぐいだったのではないかと思います。
毛呂駅の中で、先ほど購入した夕食を食べました。中には適当な大きさのベンチがあって、食事には好都合でしたが、ハエが多く、あまり快適な食事とはいえませんでした。
食事を終えるとそろそろ列車の時間。ホームに向かいました。高麗川方面の列車は橋を渡らなくてはなりませんからあまりぐずぐずしてはいられません。私は飲みかけの缶ビールを持ってホームに向かいました。
ホームの階段下あたりに立っていると一人のおじさんに話しかけられました。
「キリンビールですか?」とおじさん。
「ええ、そうですけど」と私。
「駅前の自動販売機にキリンの350(ミリリットル)はありましたが?」
「そこのヤマザキで買ったんです」
「そうだったの。いや私もキリンを買いたかったんだけど、自動販売機にはキリンは小さいのしかなくてね。アサヒ(スーパードライ)にしたんですよ」
「そうですか。キリンがお好きなんですか?」
「そう。それでは」
この通り大した話をしたわけではありません。しかし、私は毛呂駅のことが頭に浮かぶと、なぜだかあのおじさんとの会話を思いだします。自覚はしていませんがきっと私にとっては印象深い出来事だったのでしょう。こういう出会いがあるから旅に出かけたくなってしまうのかもしれません。
(2002年7月追記)
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