ある日、朝、目が覚めたら、北海道に行きたくなった。――世の中、そういうこともあるのである。よせばいいのに、なまじ資金があると、わき目も振らず強行してしまうのが旅人というものだ。
北海道という土地は「憧れ」である。何かあるんじゃないか、という漠然としたイメージ。広い大地、自然の宝庫と言われるが、ほんと?――やはり、旅人は自らの足で現地の土を踏み、目で観察せねばならない。
JTB某支店に友人を誘い込み、『札幌・道南ゾーン』周遊きっぷを買った。人の行く旅の準備に付き合わされるほどツマランものはないが、そんなことは知る由もない。
友人「いきなり行くもんなあ。何しに行くんだよ」
オレ「まあ、流氷見て、アイスとカニ食って、北大農場を拝んでくるんだよ」
友人「北海道は広いんだよ、5日間…じゃ、無理でしょ」(周遊きっぷは道内5日間有効)
オレ「(ちょっとムカッ)じゃあ、どこがいいんだ!」
友人「うーん、あそこは行っておくべきだな。。。。白石駅。」
前置きが長くなったが、そういうことで、この駅へやってきた。1999年3月10日、JR札幌駅から列車に乗って、苗穂…を過ぎて白石。宮城の白石とえらく関係のある街だが、この際どうでもいい。「行っておくべき」と念を押された駅である。だから、はるばる上野発の夜行列車に乗り込んでやってきたのだ! で、駅を降りると、どういうわけか自動改札があるのだが、駅の外に出ると、真っ白。
オレ「あああ、なるほど、白石だけに白い風景…、違うだろ!」
見当たるもの、駅前にあるセブン・イレブンだけである。そーいえば、駅前にセブン・イレブンがあると言っていた。コンビニがあるような街だから、賑やかで何かあるのかと思ったら、コンビニしかないじゃないか。
この駅にやってきたとき、時間が迫っていた。これから室蘭へ特急「スーパー北斗」で向かう直前だったのである。仕方ナシに、友人に「訪問報告」の電話をすることにした。
コンビニの前には、公衆電話がある。今や数少なくなったカード式緑電話である。話は変わるが、NTTの進める、あのIC型は公衆電話離れに拍車をかけているとしか思えない。どこかの駅なんか、10台中9台がアレで、1台はカード専用ときて、10円玉を握り締めて呆然としたことがある。
北海道から本州へは、電話代は高い。
(ルルルルルルルル…)
友人宅「(ガチャ)、はい、××ですが」
オレ「(ありゃー、本人じゃないや)あの、…君いらっしゃいますか?」
友人宅「少々お待ちください。 ♪〜〜〜〜」
オレ「(あ〜〜〜、カード度数が…)」
友人宅「♪〜〜〜〜〜〜」
オレ「(早くしろー!)」
友人「あ、もしもし?」
オレ「あああ、いま、オレ、白石駅」
友人「白石? ああ、本当に行ったんだ」
オレ「おまえが行けと言ったんだろーがー!!」
友人「あのさあ、そこから千歳の方向に行くとね、…カートレインの発着場所があるよ。だいたい…10分ぐらい歩くと…」
オレ「大雪が積もってるっての! そんなところ見に行ってどーすんだ!」
友人「何もないでしょ」
オレ「そんなところ教えるなー」
友人「ま、そんなところだ。お土産よろしくね。じゃ。ガチャ」
その後、彼に頼まれた六花亭「ミックスボンボン・六花のつゆ」を札幌西武の地下で買い、スーパー北斗に乗って室蘭へ向かった。ところが、そいつを車中で落としてしまい、JRに電話しても届いてなくて、泣く泣く札幌へ戻って、閉店時間過ぎのそごうに強行突入して最購入したという散々な旅行の結末となった。
だが、その年、オレはあと2回、札幌を訪れることになる。この訪道が、いい意味・悪い意味で、オレを北海道の虜にさせたのかもしれない。
(2002年6月追記)
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