高知にある、小さな駅「後免」は、どういうわけか有名である。きっと、読むと「ごめん!」になるからだろう。駅名がそのまま言葉になっている駅は他にいくらでもあるが
(Jリーグが始まったころ、東京都内でサッカー番組宣伝の車内広告に、「三鷹」「三田」なんてのがあったなあ)、「ごめん」みたいに、誰もがクスッと笑ってしまうのは、そう多くはない。
高知市内を駆け巡る路面電車・土佐電鉄(土電――地元の人は゛トデン"と呼んでいる。都電ではない。)の車体前面にある行き先方向幕には、わざわざひらがなで「ごめん」とある。また、JR高知駅の構内にあるキヨスクには、「ごめんせんべい」なる瓦せんべいが売っていたりする。鉄道を少しでもかじった人は、誰もが気にする「ごめん」駅。しかし、実際に訪れた人は少ないんじゃないか? と、切に思う。
「ごめん」駅は、JR土讃線にもある。駅らしさを優先すれば、こちらの駅を「百名駅」とすべきなんだろうが、土電の後免町駅を推したい。その理由をいくつか述べよう。
理由1:町の中心があるから
圧倒的に、町の中心が土電の駅である。言い換えれば、JR駅は町外れにある。人の流れを観察しても、わざわざ高知市内に出るのにJRを使う人もいない。だいいち、JR駅はバス停すらない。3分ほど歩いた先に行かねばならない。いくら旅行センターがあるといってもだめである。
 2000年8月/ETN |
理由2:なんだか知らんが記念碑が建っている
安芸線(この土電である。加えておくが、かつて土電は、さらに先の安芸まで伸びていたのである)の電化開業を祝った記念碑。そんなもん、どこにでもあるじゃないか、と思われるだろう。しかーし!その記念碑にある書名は、かの吉田茂であるのだ。
言葉だけではなんだか分からないだろうから、写真を載せておきます。石碑の一番下にあるのがその署名である。
こんな大プロジェクトにもかかわらず、その駅周辺の様子はあまりに寂しいし、この記念碑ですら工事現場の足場に隠されて目立たないのは哀しい。はるばる遠方からの旅行者が、こうしてインターネットで公開するのも、こうしたものは、ある意味で文化財なんだから、やっぱり大切にしてほしい、という思いからなのである。
理由3:ほか弁がある
そして、最大の理由は「ほか弁」の存在である! 「ほか弁」とは、庶民のお昼の味方「ほっかほか亭」という全国弁当チェーン店なんであるが、これはポイント高い。
なぜ? それは、この駅に来る人々が、単に電車に乗るためにだけでなく、お腹を満たそうという実に憂慮すべき要求に、充分に応えている、なによりの証明である。
日本中、駅は数多くあれど、駅弁を除いて弁当屋が幅を利かしている駅に、悪い駅はない。
(2002年1月追記)
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