札幌・大通公園爆発物事件
情報協力・北海道新聞社


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「花火かと思った」観客驚き

6月10日22時35分ごろ、「YOSAKOIソーラン祭り」が開かれている大通西6丁目の大通公園内に仮設されたごみ置き場付近で爆発が起きた。祭りのスタッフの大学1年生=19歳=が腹部を傷つけられて一時重体、スタッフの男性4人、女性5人の計9人が軽いやけどや耳鳴りなどを訴えて病院に運ばれた。
 爆発があったのは祭りのためにトタンで作られた横3m、縦8m、高さ2mほどの仮設ごみ置き場。トタンの屋根がついていて、中には燃えるごみが入ったポリ袋が祭り初日の7日から積まれていた。爆発によってごみ置き場の壁や屋根などが吹き飛んだりはしていない模様だ。
 爆発当時、祭りの関係者らがごみ置き場近くで分別作業をしていたという。

   現場周辺は一時、騒然とした。
 事故があったのは大通公園西八丁目会場での演舞が終わった直後の22時半すぎ。祭り帰りの踊り子たちや観客で祭りの余韻が残っているさなかだった。
 事故の瞬間を目撃した札幌市北区のフリーター=18歳=は「大通公園西八丁目会場のステージを見た後、ドーンという花火のような大きな音が聞こえた」と驚いた表情。けがをしたスタッフを目撃した別のスタッフは「『袋に爆発物を入れたのはだれだ』との叫び声が聞こえた。ファストフードの袋の中で何かが爆発したのではないか」と話した。
 現場から約200m離れた祭り会場にいた短大生の女性=18歳=は「祭りが終わってしばらくして、ドンと1回、体が震えるくらいの大音響がした。花火かと思った」と話した。爆音と同時に火を見たという情報もある。当時は、この日の踊りが終わった直後で、周囲に多くの見物客らがいたという。

 同祭り組織委員会は「まだ詳細が分からない」と言い、現場で道警の事情聴取に応じた。スタッフの1人は「今までこんな事故はなかった。何が起きたのか、今は何も分からない」と困惑した様子。
 けがをした十人が運び込まれた札幌市医師会夜間急病センターと市内二カ所の病院には関係者が続々と詰めかけ、治療が終わるのを心配そうに見守った。

 札幌中央署は11日未明、何者かが爆発物を置いた可能性が強いとみて、殺人未遂の疑いで捜査本部を設置、本格捜査に乗り出した。一時重体の学生の体内から、クギが見つかったほか、現場周辺でも多数のクギなどが散乱しており、捜査本部は爆破物の特定などを進めている。
 調べによると、重体だった学生の左肺には、約5cmのクギが突き刺さっていたことが分かった。また、現場周辺約50mの範囲で、同様のクギ十数本発見された。
 これまでの捜査で、クギは爆発地点から飛び散った可能性が強く、爆発の際、火薬のような臭いが立ち込めたという。周囲には、可燃性の缶など、爆発に結びつくようなごみは見つかっていない。こうした状況から、捜査本部は何者かが爆発物を会場に置いた可能性が強いとみて、飛び散ったごみなどの断片を鑑定し、具体的な爆破方法や装置の特定などを急ぐ。
 関係者によると、爆発したのは、大通七丁目の灰皿の上に置かれていたファストフードの不審な袋だった可能性が強まっている。

無差別テロの可能性も

 初夏の札幌を鮮やかに彩るはずのYOSAKOIソーラン祭り会場の爆発物事件は、10人もの学生スタッフを傷つけ、盛り上がる祭り気分を凍りつかせた。クギを詰め込み殺傷力を高めた爆発物を使った凶悪な無差別テロは、いったいだれが、何のために仕組んだのか。
 重体だった学生はようやく意識を取り戻したが、例年、感動に包まれる11日夜のフィナーレは、けがと闘う仲間への思いと、悪質な犯行への怒りに覆われた。
 会場に仕掛けられた爆発物は、学生を一時、意識不明の重体にさせ、計10人ものスタッフに重軽傷を負わせるほどの殺傷力があるものだった。

 道警や目撃者の話を総合すると、爆発があった大通西六の臨時ごみ集積場では、イベントが終わった22時ごろからスタッフがごみを分別していた。爆発は22時35分ごろ。現場近くにいた学生スタッフ=19歳=は「ドンという音が聞こえた。花火にしては音が大きく、ガス爆発かと思った」と証言する。
 現場から30mほど離れた場所にいた大学4年生=21歳=は「車がぶつかったようなボンという音が聞こえた。人が倒れ、3人が血を流していた」。閃光や立ち上る白い煙を目撃したスタッフもいる。現場から約160m離れた大通西八丁目にも爆発のごう音が響いたという。
 爆発物は多数のクギを詰め込んだ仕掛けと見られ、十数本が発見された。クギは爆発地点から最大50m離れた地点でも見つかった。重体だった学生の体内に刺さり込んだクギは長さ4〜5cmで、腹部から入り左肺まで達していた。
 爆発当時、安田さんと背中合わせで作業をしていた高校3年生=17歳=は、「(爆発直後は)思わずしゃがみ込むほどの激痛を足に感じた」と語る。高校生の左手には10カ所にガラス片が突き刺さっていた。われに返った時、公園中央の芝生に2人の学生スタッフが倒れているのに気付いたという。
 道警は、爆発の衝撃で近くのガラスびんが割れて飛散したか、あるいは、爆発物がガラスびんに詰められていた可能性もあるとみて調べている。
 負傷した10人の学生スタッフは、いずれも爆発物があったとされる、ごみ集積場の入り口から半径10m以内で作業中で、今回の犯行が強い殺傷力のある爆発物で無差別に観客やスタッフを狙った可能性も浮上している。

犯行声明か BBSに書き込み

 インターネットWebサイトの、「掲示板(BBS)」と呼ばれる匿名投稿ページに事件前、「会場に危険物を設置せよ」「爆破予告をかけるしかない」など、祭りの妨害をあおる書き込みがされていたことが分かった。札幌中央署の捜査本部で事件との関連を調べている。
 5月下旬に設けられた「YOSAKOI」に関するコーナーでは、祭りへの賛否両論が激しく交わされ、この中で「爆破予告」「危険物」といった過激な表現で祭りを妨害しようという意見が数件見られた。
 このほか、同祭り組織委員会が開いたWebページにも、「祭りを中止させるには爆弾予告をすればよい」などの書き込みが数件あった。組織委では事件後にこの事実を確認、捜査本部に通報したという。同本部では「これら書き込みと事件との関連は不明だが、詳しく調べる」としている。

紙コップ「十数分前に目撃」

 爆弾が仕込まれていたとみられる紙コップは、爆発の約25分前の10日22時10分すぎに、目撃されていたことが、13日までの札幌中央署などの捜査本部の調べで分かった。
 同本部などによると、紙コップは大通西七の同公園内北側の灰皿の上で複数の関係者が目撃。高さ約15cm、上部の直径約9cm、下部の直径約6cm。大手ファストフード店のロゴが入っていた。同本部はこの紙コップを持つなどした不審人物の情報を募っている。
 一方、爆破事件で一時、意識不明の重体だった学生スタッフ=19歳=は、快方に向かっているという。

6日前にも類似爆破事件が

 大通公園の爆発事件と、酷似した爆破事件が、わずか6日前の4日夜、中央区南4西4のコンビニエンスストアで起きていたことが12日、分かった。
 札幌中央署などの捜査本部は、同店前の現場にクギのような金属が残っていたことや爆発後の火薬臭など、共通点があることから、同一犯による連続爆破事件の可能性もあるとみて、慎重に調べを進めている。
 関係者によると、この爆破事件があったのは、4日22時ごろで、同店の出入り口の自動ドアが突然、「ドーン」という音と同時に損壊。入り口の縦約180cm、横約70cmの自動ドアガラスが飛び散った。  同店内にいた店員らにけが人はなかった。
 爆発後の現場周辺には、火薬臭と白煙が立ち込め、散乱したガラス片の中からは、クギのような金属数本と紙片などが見つかったという。
 捜査本部のこれまでの調べでは、10日の大通公園の爆破事件でも、周辺に火薬臭が漂っていたほか、現場からクギのような金属十数本や紙片、ガラス片などが発見されており、犯行に使われた爆弾には火薬と一緒にクギが詰め込まれていたとみられる。
 さらに、大通公園の事件では、爆弾はファストフード店の紙コップに仕込まれていたとの見方が強まっているが、コンビニエンスストア前の爆発後に見つかった紙片も、同じファストフードチェーンで使われている袋などの切れ端だった可能性がある。

殺傷力を持つクギ入り爆発物

 札幌中央署などは12日までに、何者かが祭り会場内に、殺傷力を持つクギ入りの爆発物を置いたとの見方を強め、殺人未遂の疑いで同署に捜査本部(本部長・浅上勝敏刑事部長)を設置した。爆発物は何らかの容器に、花火や発炎筒などに使われる火薬とクギを詰め込んだ手製のものとみられる。捜査本部は爆発物の構造解明を急ぐとともに、12日10時から、軽傷のスタッフ立ち会いのもと、現場検証を行うなど捜査を本格化させている。
 一時重体だった学生の左肺からは長さ約4〜5cmのクギが見つかったほか、現場のごみ集積場周辺でクギ十数本が散乱していた。一部は50m離れた地点にも飛び散っていたという。爆発は安田さんら10人が、大通西4-10の祭り会場内で集めたごみを、燃えるごみと燃えないごみに分別中に起きた。
 これまでの捜査で、安田さんはごみ集積場入り口の約1.5m前方で作業していたことから、この周辺が爆発地点だったとみられる。
 捜査本部は、多数のクギが飛び散ったり、飛散物に火薬の痕跡が見つかったことなどから、何者かがクギと火薬を仕込んだ爆発物を、ごみに見せかけて祭り会場に置いた可能性が高いとみている。軽傷者の中には、ガラス片でけがをしたスタッフもおり、捜査本部では、容器がガラスだったかどうかなど、現場から集めた金属片などとともに関連を調べている。
 捜査本部によると、爆発物は重体の安田さんが大通西7の公園内の北側の灰皿上から運んできたファストフード店の紙コップだった可能性が強まっている。紙コップはかなり重かったらしいという証言があり、中に爆発物の容器が入っていたとみられている。
 また、ごみは祭りが終了した10日22時ごろから集め出したといい、捜査本部はこの前後に、灰皿付近に不審な人物がいなかったか、聞き込みを続けている。
 捜査本部によると、これまでに犯行声明は確認されていないほか、祭り組織委員会に事前に脅迫電話などもなかったという。  

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